神奈川県主催の中小企業向け展示会です。

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神奈川県の全市町村が支援しているのですがオリジナル商品が少ないのです。

 パシフィコ横浜で開催されて「テクニカルショウヨコハマ」に出掛けてきました。この展示会は神奈川県が主催し、県内の主要な市町村(横浜市、川崎市、相模原市、厚木市など)が協力しているものです。正式な名称は「第39回工業技術見本市」というもので、神奈川県にある技術系の中小企業が出店するものです。このため、製造業者や加工業者の出店が主なもので、精度や技術は優れているのですが、いずれも下請けや委託の受注を目指した企業が目立っています。オリジナルの商品が少ないのが欠点といえば欠点です。
 会場には県内の企業ばかりではなく、埼玉県、長野県、静岡県などの他県からのブースも目立っています。相互乗り入れで他県の中小企業の参加も許諾しているようです。4段目の写真は、新潟県の燕市の島で、一列のブースを借り切って地場の企業がまとまって出店していました。
 会場内では何やら人だかりするブースがありました。5段目の写真がそれで、オリジナルのロボットの展示をしていました。小さなロボットでしたが、人の声に反応するのが面白いのか熱心に観察されてました。
 さて、この展示会は地元の中小企業を支援するためのものであることから、今回初めての出店者も見かけられました(上記の写真とは無関係の企業です)。新商品を発表する絶好の機会のため、これから発展しそうな中小企業や個人企業(零細企業)だけを集めたブースが設営されていました。この特別なブースでは、「これから大いに売るぞ」という意気込みの中小企業が出店し、商談できる来場者に対して待機されていました。意気込みはいいのですが、私の今までの経験からして出店した段階でもう失敗していることがありありと判りました。失敗すると思われる企業の条件は次のようになります。
 ⑴ 補助金、支援金を受け取っている。
 少し目先の利いたアイデアによる商品を開発し、工業会とか産業振興団体に申請して実施化の補助金、支援金をもらっているケースです。公的団体から補助金を受け取っているのですから、良いアイデアであると公的団体が認めてくれた、と錯覚しがちなのです。公的団体が補助金を支給したとしても、その商品が売れるとは限らないのです。むしろ、公的団体が認定したようなアイデア商品は売れないのです。
 また、補助金は開発や販売のための経費の全てを支援してくれるのではないのです。実費の半分や三分の二程度の補助なのです。すると、不足分は自己負担となります。売れない商品のために大枚を投資することになります。
 ⑵ 企業主が他人の意見を聞き入れない。
 前述したように、公的団体から補助金が支給されたり、公的団体から優良商品と認定されたりすると、その中小企業主にとっては「お上が必ず売れると認めてくれた」と錯覚することになります。すると、「私が開発した商品は必ず売れるはずであり、それを世間が認めないのはおかしい」という自惚れになりがちです。第三者からその商品の欠点やマーケットと合わない点を指摘されても全く聞く耳を持たなくなります。
 ⑶ 自ら製造することなくライセンス料で収益を上げようとする。
 自分で発想したアイデアの商品なのですが、自社で製造するようなことはせず、他社に製造、販売させて、そのライセンス料をあてにしている。この種の企業主は、元は大企業に勤めていた技術者が多いのですが、大企業での体験からライセンス収入を目的に営業している人が多いようです。特許や意匠などの独占権を取得し、それを他社に利用させてライセンス料を受け取ることを目的としているのです。特許権などのライセンスは大企業であるからできることであり、中小企業や零細企業の所有する特許権であっては誰も相手にしてくれません。しかも、1件や2件程度の特許権であっては、非常に弱いものです。他社からすれば、その特許権を避けて同じような商品を製造するに決まっています。
 こんなことが、元大企業の技術屋が陥る失敗の原因でしょう。今回も会場では失敗することが目に見えている中小企業を見かけました。その企業が開発したアイデア商品は私が既に別の中小企業が開発したが失敗した商品とソックリなのです。その企業主に「この商品はもう販売したことがあって、失敗しますよ」と忠告したのですが、全く聞き入れてくれませんでした。逆に、カンカンになって怒りだしました。自信を持って出品した商品をボロクソにけなされたので怒るのは分かりますが、売れないものは売れないのです。
 多分、この企業主は数百万程度の損をしてから初めて私の忠告を理解できるでしょう。それにはこれから2、3年はかかると思われます。大企業を退職し、退職金を注ぎ込んで開発したようですが、老後はどうなるか心配です。
2018年5月28日