介護のための車椅子。

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一見すると参入が容易なようですが、技術、価格の面で難しいのです。

国際福祉機器展などの介護関係の見本市には、必ずと言っていいほど新型の車椅子が出品されます。何れも新参の中小企業や個人起業家からの出品でした。介護業界には車椅子が必要であり、巨大な市場が見込めると判断したからでしょう。また、車椅子は介護保険の対象であり、保険の認定を受けた被介護者は定価の1割を負担するだけであるため販売し易いとも考えたからかと思われます。しかし、新規に車椅子の業界に参入しても販売は難しいようです。
一段目の写真は或る鉄工所が試作したもので、木製の椅子が油圧ジャッキで持ち上げられる構造となっていました。被介護者を支援する人の立場から設計したのではないため、無骨であり使いにくそうなものでした。設計した人に、どのような理由で開発したか、と聞いたところ、ただ部品を寄せ集めて作ってみた、とのことでした。介護施設で働く人達が使いやすいかどうかを無視したような製品でした。二段目の写真は三輪車型で、被介護者を椅子に座らせ、支援者がペダルを踏むことで迅速に移動することができるというものです。しかし、被介護者は老人や障害者ばかりであり、ゆったりと安全に移動することが基本なのです。速度を上げて早く移動させる必要性は薄いのです。三段目の写真は、車椅子の前にペタルの付いた前輪を取り付けた構造で、幼児の三輪車と同じです。多少足が動く被介護者がペタルを使うことで、移動とリハビリができる、というものです。移動するのであれば三輪自転車があり、リハビリでは専門の用具があるため、どちらつかずの中途半端です。四段目の写真は、車椅子を電動式にするアダプターです。車椅子の前にモーターで動作する前輪を連結し、被介護者がハンドル操作することで自由に移動することができるというものです。最近は電動車椅子が各種販売されていて、価格も安くなってきました。車輪を手で回していた車椅子にこのようなアダプターを取り付けても、特段のメリットは発生してこないでしょう。五段目の写真は、車輪を分割できる車椅子で、車輪の三分の一程度を取り外して側方を開放できるというものです。車椅子に座った被介護者が、ベッドや便器などに乗り移る際に、従来は車輪が邪魔でしたが、この構造であれば横への移動が簡単になる、というものです。この構造では、車輪が重くなり、車椅子を押すには余分な力が必要となる欠点があります。そもそも、被介護者を車椅子からベッドに移し変えるには、支援者が持ち上げて行っているため、このような複雑な機構にする必要はないはずです。むしろ、支援者が車椅子の車輪を分解したり組み立てたりしなければならず、支援者にとっては作業が増えて煩わしいことになります。

特定の専業メーカーでマーケットが寡占化している車椅子の業界であっても、頑張っている中小企業もあります。六段目の写真はチタン製の高額な車椅子を製造している中小企業の例です。この企業では、極めて軽い車椅子やレース用の車椅子を製造していました。受注生産も受け付けていて、価格は市販のものに比べると数倍もします。

では、どのような理由で車椅子に中小企業が新規に参入してくるか、と言えば、設計、製造が容易であるということでしょう。構造は簡単であり、アルミ溶接ができる中小企業であれば簡単に製造できるからである。その他にも大きな参入障害があります。

この続きは拙著「くたばれベンチャー」をお読み下さい。

kutabare

タイトル 「くたばれベンチャー!モノづくりニッチで起業」

出版社  株式会社秀和システム
定価   1500円(税別)

内容の詳細とご注文は下記のホームページをご参照下さい。
http://www.shuwasystem.co.jp/products/7980html/4593.html

2014年8月12日