オリンパスによる損失隠しの実態はこんなことだったか。

news1.jpg
news2.jpg
news3.jpg
news4.jpg
どこか不自然な出店でした。


医療機械メーカーで有名なオリンパスが、投資の損失隠しのために企業買収していた、というニュースが新聞、テレビなどで大々的に報道されていいたのは先月の11月初めであった。どのような不正が行われていたか、と言えば、要するに未上場のボロ会社を異常な高値で買収し、買収後にその資産価値が下がったことにして、帳簿上でその差額を損失として計上していた。全く無価値の企業を、将来は有望な技術・商品があるという名目で常識外の買収価格にしてしまったのであった。オリンパスが買収した企業は3社あって、その中に「ニューズシェフ(NewsChef)」という企業があった。オリンパスの損失飛ばし発覚事件の影で、あまり報道されていなかったこの被買収企業について少し説明してみる。
このニューズシェフ社は見本市で2回ほど見かけた記憶がある。1回目は2005年5月であり、2回目は2007年4月であった。1回目に見本市で見かけたときは、小さなブースで商品説明していて目立たなかったのだが、2回目に見たときは極端にド派手な宣伝をしていた。たまたま、当時の画像が残っていたので、この会社の出店状況と商品を思い出してみる。なお、この会社は元々は投資コンサルタント会社であったが、一時休眠した後でニューズ社と社名変更し、調理器具の製造会社になり、オリンパスに買収された後にニューズシェフ社に社名変更している。オリンパスに買収されたのが2007年であることから、買収直後にド派手な宣伝活動を開始したことになる。
一段目の写真は2007年の「ファベックス」見本市に出店したブースである。ファベックス展は、食品の容器や食器を主体にした見本市で、この会場の一角には幅広の床を借りて巨大なパネルを設営していた。壁面に見える四角い枠は電子レンジのパネルである。本物の電子レンジを縦横に積み上げたのか、電子レンジの前枠だけをパネルに固定したのか判らないが、遠くから見てもド派手な演出であった。相当に広告費を使っていたと思われる。このファベックスの見本市に出店している企業は、地味な企業ばかりであり、こんな巨大なパネルを使ったディスプレーは場内でも目立っていた。
二段目の写真はカウンターでの試食を出している風景で、多数のバイトを並べて料理を出していた。試食自体はどのブースでも行われているものであるため珍しくはないが、こんなに長いカウンターで多数のバイト女性を並べるのも珍しい光景であった。
三段目の写真は、このニューズシェフ社が販売しようとしている調理容器である。容器の中には食品が入れてあるが、この食品は商品ではなく、半透明な調理容器だけが商品である。社員の説明によれば、この容器に食品を入れ、電子レンジで加熱することで自動的に調理され、その容器で食事をすることができる便利なもの、ということであった。似たような商品は既に市販されているが、それらと比べると蒸気が出るので味が良いとのことである。四段目の写真では、この容器を使えばこんなに簡単に調理できます、というデモンストレーションである。要するに、ニューズシェフ社はこの容器を冷凍食品会社に販売し、容器に各種の食材を詰合せて、簡単に調理できる容器付き食品ということで販売させることが目的であった。
2007年にこの見本市でニューズシェフ社を見かけてから後で、私は一度も見たことがなかった。2007年にオリンパス社に買収された直後、このようなド派手な宣伝をしただけで見本市会場には姿を見せることはなかった。オリンパス社は、企業買収をしたのでその結果をぶち上げるためだけにこのような出店手段を取ったのであろう。
また、後で気がついたことであるが、電子レンジで加熱して料理するという特殊な容器は、そもそもそれほど沢山の数を販売できるものではなく、マーケットが狭いはずである。派手に宣伝しても売れ行きが良くなるはずはない。そもそも、ニューズシェフ社で販売していた調理容器はそれほど単価の高いものではなく、数十円程度の単価であったと推測される。利益率の低い商品にこれほどまで巨額の広告費をかける必要はなかったはずである。
1回目の出店は未だオリンパス社に買収される前で、これから新開発の容器を地道に売っていこうかという時ではなかっただろうか。2回目に見本市に出店した時は、オリンパス社がこの企業を買収した直後で、「将来有望であり、企業の成長が望めますよ」という虚偽のアッピールのためにド派手な演出をしたのではなかろうか。2007年からはニューズシェフ社は見本市で一度も見かけることはなく、何となく薄気味の悪い出店であったことが今でも記憶にある。
見本市に出店する動機は各種あり、各社がそれぞれの思惑で費用を払って出店しているのだが、まさか、投資の損失隠しのために見本市会場で買収した企業の宣伝をするとは考えられないものだった。こんな見本市の利用方法もある、ということを始めて知った。
2011年12月25日