実現できない夢は捨てるべきでは

夢の無い男、と言われてきた。
しかし、夢を実現させるためには実現できない夢は捨てるべきだ。


 私は女性にもてたことが無い。その理由は、女性からすると、私には『夢』が無いかららしい。複数の女性から、夢が無い男、と言われ、持てない原因がやっと判った。女性からこのように評価されていることに気がついたのは、私が30歳を過ぎてからであった。
 では、どのような点で夢が無いと言われているのかを分析してみたら、私の夢が現実的に近いことであった。私の夢の殆どは近未来に実現可能なものばかりであり、非日常的な夢を持っていないことである。
 例えば、ハワイに海外旅行をして遊んでみたいという夢を語ったとする。女性の場合には、未だ行ってみたことのないハワイの風景、観光地などをガイドブックからの知識であれこれと話題に、もしハワイに出掛けたとしたらどんなに楽しいかを語り合うのである。これに対して、私がハワイ旅行を語るとすれば、出発日の目標を決め、予算を考え、旅行会社の選別が話題となる。もし、資金の余裕がなく、ハワイ旅行が出来そうもないと判ったなら、私は海外旅行を話題にすることはしない。実現できそうも無いようなテーマであれば、あまり話題にもしなかったようだ(現在でもそうであるが)。半年、一年の間に実現できるようなテーマばかりを話題にするだけではない。理論的に考えて、十年二十年後であれば実現可能性があるようなテーマであれば口にする。要するに、実現が不可能なテーマは、私にとっては夢ではなさそうだ。或る人からは、『あなたの考えているのは夢ではなくて、計画だ』と言われたこともあった。
 ニッチ本を発刊しようとするのは私の長年の夢であった。この夢を実現させるために、まず雑誌社を攻略し、取材先を見つけて交渉し、原稿を期限までに書き上げなければならなかった。雑誌に連載されてから単行本を発行するには、出版社を探して交渉し、内容の検討と打ち合わせをし、校正しなければならない。単行本を発刊してからも出版記念会に出席して宣伝しなければならず、全て期限を決めて順番に処理していかなければ成り立たないのが実情である。
 では、女性にとって最高の夢とは何か、と考えた場合、それはボンヤリとした曖昧なものらしい。実現できそうであるが、ある一面からすると実現できないような内容のテーマが夢のようである。非現実的な話題なのであるが、もし実現できたとすれば楽しいのではないか、という内容が夢なのである。
 知人の中に、英国の小説を翻訳して単行本を出版する夢を持っている女性がいる。十年前も出版の夢を語り、五年前も出版の夢を語り、今もその夢を持っている。多分、五年後も、十年後もその夢を語るのではなかろうか。彼女にとっては出版してみたい、という夢を語っている短い時間が一番楽しいのである。なるほど、『夢』という漢字の意味からすれば、できそうでできないテーマがまさしく夢なのである。
 私ができそうでできない夢を持っていたならどうなるであろか。ニッチ本の出版もできず、隙間商品についての分析もできなかったであろう。私が出会ってきたニッチ企業主の殆どは、私よりももっと現実的であった。彼らは『中小企業として成功してみたい夢』だけを持っていたならば、ニッチ企業としては成功しなかったであろう。ニッチ企業主となり、安定した会社経営を続けるためには超現実的な思考にならざるを得ないのである。
2005年2月20日