町のそば屋さんの見本市です。

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小さな町のそば屋さんが頼りにしている唯一の見本市なのです。


 都内の某所で開催された「めん産業展」に出掛けてきました。規模としてはビッグサイトの見本市と比べて小さく、出展者も少ないのですが、都内での麺業者(主にそば屋であり、うどん屋も少数は含まれる)が頼りにしているものです。この見本市以外にはそば屋を対象とした見本市が無いのです。食品機械展や食材見本市はあるのですが、それらはどちらかと言えば給食センターやチェーン店に向けた大量供給、大量消費の料理店を相手にしたものなのです。夫婦二人で営業していたり、家族だけで営業しているような町のそば屋には向いていません。
 この見本市では、町のそば屋、うどん屋の経営者が来場するのです。ただ、困ったことに、町のそば屋は高齢化しているため、来場される方にはおじいさん、おばあさんが目立つのです。若い人も来場されているのですが、影が薄いようです。しかし、潜在的には若い(中年か)がそば屋業界に参入しているのも事実であり、これから来場者の年代が若くなることを期待しています。新規参入者はこの見本市ではなく、個別に道具や材料を仕入れているようです。
 二段目の写真は玄そばをそば粉にひくための自動製粉機を出品しているブースです。昨今の高級そば屋では、自家製粉、自家製麺が主流となっていて、玄そばを仕入れて製粉し、手打ちでそば麺を製造するのが主流となっています。そば屋の裏側にはこのような機械が設置されているのです。製粉機を出品しているブースはこの他にも多数あり、大きいのから机の上におけるような小さなものまで多数種類がありました。それぞれ特色があるようで、そば屋は好みにあった製麺機を購入しているようです。
 三段目の写真はそば屋が使う各種の道具を出品しているブースです。最近は素人のそば打ちが流行っていて、このようなプロが使う道具を趣味の人達も求めているようです。実を言うと、そば屋の業界には素人からの参入が多くなっているのです。趣味でそば打ちをしている内に本格的にそば屋を開業してみたくなった人や、脱サラしてそば屋を開業する人が増えているのです。従来からあるそば屋の多くは、伝統のあるそば屋で修行して暖簾分けして独立するタイプが大半でした。しかし、最近の傾向では、そば屋で修行もせずに独学でそばの調理方法を研究し、そのまま開業する人が多いのです。このようなタイプの人達は、「美味いそばはなんであるか」をひたすら追求していく性格の人がほとんどなんだそうです。従来の町のそば屋では、「どうした沢山儲かるか」を追求するタイプが多いようで、旧態依然(とまでは言わないが)の営業方針を守っているのだそうです。だが、趣味から始まった新規参入組のそば屋は、儲けることも目的なのですが、他店よりも美味いそばで頭角を表そうという意識があるようです。いわば、そば屋の業界に殴り込みをかけてきたようなものですが、このような研究家タイプが増えていけば業界の活性化になると思うのですが。
 四段目の写真はオーダーメードの暖簾屋のブースです。どのそば屋もそうですが、店の入口には暖簾がかけてあり、それには店名が入れてあります。この暖簾屋は注文を受けてから名入りの暖簾を製造しています。結構高いのですが、そば屋にとっては必要品のため必ず注文があるようです。この他にも、そば屋専用の容器、お土産用袋などのブースが出店していて、この見本市を一回りするだけでそば屋に必要な機械、商品を入手することができます。お金を持ってでかければ、誰でもそば屋を開店することができます(そばが美味いか不味いかは別として)。
 五段目の写真は、そば屋で出される「種物」の素材を冷凍食品として供給している会社のブースです。そばの上にかけるネタ(けんちん汁、かも南蛮など)が冷凍されてそば屋に供給されています。つまり、そば屋の台所では、ビニール袋に入ったネタを湯せんで温め、丼の上からかけるだけで料理ができあがってしまうのです。これは別に珍しいことではありませんが、このブースの上の方を注意して見ていただくと、料理のビラが垂れ下がってます。この食品会社では、冷凍食品を買ったそば屋にはこのビラをおまけで付けているのです。ビラの下には「   円」という白地の部分があり、この白地の部分にそれぞれのそば屋が定価を書き込むようになっています。こうしてみると、全国のそば屋で出されるネタとビラは同じものとなり、どこのそば屋に入っても同じビラを見て注文し、同じ冷凍食品のネタを食べることになります。寂しいと言えば寂しいのですが、これも流通の変化で致し方ないことでしょう。
2008年10月19日