2005年05月02日
●ヨタ出版社のインチキ雑誌
零細企業には変なヨタ出版社が取材することがある。
ヨタ出版社と間違えられて困ったことがあった。
あちこちの零細企業を取材していると、その会社の社長から『おたくの取材ではお金を請求しないのですか?』と言われることがしばしばあった。私よりも前にその企業を取材した出版社からは、『取材協力費』或いは『記事掲載費』と称して金銭を請求したことがあったようだ。また、電話で零細企業に取材の申し込みをすると、社長からは『金がかかるような取材はお断りしますヨ。』と断られることもあった。
これはどういう現象かと説明すると、雑誌を発行している出版社の中には、取材に対して金銭を要求してくるところがあるためである。一般には馴染みが薄いのであるが、世間を知らない中小零細の企業主を相手にして、悪どい取材をする出版社の存在がある。このような出版社では、少し余裕のある中小零細企業を見つけ出し、取材を持ちかけるのである。そして、取材が終わった段階で、発行する雑誌のページ数に応じた取材協力費を請求する。請求金額は記事の編成と内容により、十万円程度から数十万円までの範囲があるようだ。私が取材してきた企業の中には、実際に支払ったところもあった。
どういうカラクリになっているかと言えば、その出版社(以下、ヨタ出版社とする)からすれば一種の宣伝広告費の請求なのである。ヨタ出版社では月刊の経済雑誌を発行していて、書店で販売されているし、時々は新聞にその経済雑誌の広告が載ることもある。決してインチキな雑誌を発行しているわけではない。しかし、その雑誌はどこの書店でも購入できるというのではなく、都内でも紀伊国屋などの限られた書店の雑誌コーナーの隅に申し訳程度に置かれているだけである。それでも雑誌コードを持ち、毎月発売している実績のある一応は立派な月刊雑誌なのである。問題は、ヨタ出版社の取材方法と記事の内容である。
ヨタ出版社が発行する経済雑誌の大部分の記事は、中小零細企業の業績や、社長の奮闘記あり、ヨイショ記事と考えればよい。取材される企業は、どちらかといえば地方に所在し、一代で個人企業を立ち上げて業績を上げつつある企業である。夫婦で始めた事業が伸び、従業員も3、40名まで雇うようになって余裕が出始めたような企業が一番狙われているようだ。そんなターゲットをヨタ出版社が見つけ、甘言で取材を行って記事にするのである。協力費を貰っていることから、その会社の良いところだけを活字にするのは当然である。読んでいても面白くも何とも無い内容である。
こんなインチキ雑誌が成り立つのだろうか、と疑問に感じるかもしれない。しかし、ヨタ出版社は潰れずにインチキ経済雑誌を今も発行し続けている。これには取材される中小零細企業の方にも一つの要因がある。特別な才能がある訳でもなく、社会貢献してきた実績がある訳でもないが、地方都市で一旗揚げた零細企業主にとってはその事業を自慢できる場が無いのである。といって、貧乏をしている訳でもなく、数十万円程度の金銭は惜しくもない経済状況なのである。そんな時には、『俺も、一回は雑誌に載りたいな。』、『今まで会社を大きくしてきた苦労を活字にして貰いたいな。』というような心理になるらしい。事業が上手く回転してきて生活に余裕が出てくると、どの企業主にも名誉欲が出てくるらしい。そんな個人企業主の心理を汲み取り、ヨタ出版社では金銭を受けることの代替えとしてインチキ雑誌に社長の一代記や経営方針などを掲載するのである。
ヨタ出版社からすれば、どこのマスコミを扱ってくれないような平凡な零細企業を活字にして雑誌に掲載する。取材された零細企業主からすれば、一応は成功してきた事業を一般人に読ませたいという願望がある。社長からヨタ出版社に支払った取材協力費は、広告宣伝費として経理で落とすことができる。こうして、零細企業主とヨタ出版社の思惑が一致し、内容の無いインチキ雑誌がいつまでも続く土壌ができあがるのである。
このようなヨタ出版社が活動してきたため、良心的な零細企業ではマスコミ全体について良からぬ偏見が植えつけられていた。『雑誌の出版社では取材で金銭を請求するのが常套になっている。』、『マスコミは金でどのようにでも動く。』などの悪い方に見られることである。私が零細企業を取材するときに、時々、ヨタ出版社と同等ではないかと判断され、大いに困った経験があった。
私が今まで付き合ってきたマスコミは、日経新聞社、ダイヤモンド社などの大手出版社ばかりであった。それらは紳士的であり、取材では正確さと客観性を重視し、決して協力費を請求する企業ではない。全国に数多くある出版社の中のほんの少数のヨタ出版社の悪行のおかげで、私を含めて真面目に取材を行っている正規の出版社までもが悪いように解釈されることは困ったことである。
全国の中小零細企業の社長様にお願いしたい。まともな出版社とヨタ出版社を見分ける力を育成して下さい。
2005年5月2日
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