2005年03月22日

●零細企業の応接室では

取材したのは何時も事務室であった。
零細企業には応接室や社長室は相応しくないのであろう。

 今までに、訪問して取材した企業は36社である。取材では社長と面談するのであるが、「社長室」とか「応接室」などという立派な設備を持った企業は極く僅かであった。たまに豪華な応接室を設えた企業もあったが、それらは従業員が数十人の規模であり、自社ビルを保有している企業に限られた。従業員が十人以下の企業であっては社長室もなく、事務室の隅の方で事務机を挟んで取材することもあった。利益が出ていないので社長室が無い、という理由ではない。多くの取材先は高収入を得ているはずであり、社長室を作ろうと思えばすぐにできるはずである。だが、社長自身がナッパ服で作業現場に携わる零細企業では、「社長室」「応接室」は無用の長物なのであろう。隣の部屋で従業員が油にまみれて仕事をしているのに、社長だけが背広を着て社長室にいるようでは社員はやる気がなくなるはず。また、世間で知られていない零細企業を取材にくるマスコミもいないので、社長室を作る必要性がないのであろう。
 零細企業は質実剛健がモットーである。社員が少ないし、売上げも少ないのであるから、豪華な社長室を持つ必要や理由はない。もし、従業員が十数名程度の規模の企業であって、三十畳の広さの部屋に本革製のソファーを並べた応接室を持っていたならおかしなものであろう。そんな企業は、虚業集団か詐欺会社と考えて間違いないであろう。応接室の豪華さで客を驚かし、いかにも利益が出ているかのように装うためであろう。会社の業績が悪いのに、豪華な応接室を持つ企業にはまともなものはないであろう。
 そんなことは判っているつもりの私でも、工場の隅にある事務室の土間で取材するのはやっぱり抵抗があった。かっこうはつけなくとも良いが、静かに話ができる部屋を持って欲しい、というのが本音であった。取材している隣が事務机であるため、電話のベルの音が耳に入ると取材に集中しにくいのである。或る社長には、取材が終わってから「来客のために豪華ではなくとも、静かに面談できる部屋を作られた方が来客のためによろしいですよ」と進言したことがあった。社長は、「私は今まで気づかなかったが、商談にくる来客には応接室が無いことで不便に感じている人がいることが判った。今後の参考にします。」と仰った。
 事務室の隅での取材では、大抵は社長一人と面談することになるが、たまに奥さんと二人から話を聞くこともあった。二人で会社を興し、奥さんが専務であって経理などを司っていることから、二人からお聞きするするのが都合が良いからであろう。結婚してから二人で会社を切り盛りされてこられたのである。創業時の苦労話などを聞くことができ、微笑ましいことである。
 その逆に、大人数で取材をしたこともあった。高崎市にある焼却炉のメーカーを取材した時は、雑誌社が取材にきたというので社長が張り切っていて、専務以下技術陣を揃えて6名を相手にして取材することになった。会議室で6名を相手にして質問し、それの回答を聞くのである。こんな取材では、あちこちから回答が出て、それぞれが異なった意見を述べるのでまとまりがつかない。零細企業の取材では、社長一人から話を聞くのが一番である。
2005年3月21日

Posted by hibi at 2005年03月22日 00:23
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.nichederich.com/cgi/mt-tb.cgi/44

コメント