2005年03月06日
●取材先の最終審査
見本市で見つけたニッチ企業であっても取材対象にはならない。
編集部と協議してから、取材先が最終的に決められた。
見本市でニッチ企業を見つける方法は前回説明した。しかし、これで直ぐに企業取材をするのではない。月刊誌『φ』の編集部と協議し、取材するための最終的な判断をしなければならない。私が見つけてきた企業名により、編集部では帝国データーバンクによる信用調査の情報を入手する。帝国データーバンクの信用調査報告書では、依頼された企業の業績、社長の個人的な性格、今後の見通しなどが事細かく記載されている。この報告書と私が入手したカタログなどの資料を比較し、取材するかどうかの検討をするのである。
商品の実物やカタログなどで判断すると非常に優れた隙間商品を製造している企業であっても、社長の経営手腕が悪いために赤字続きの企業もある。ニッチ企業の取材であっては、これから健全な中小企業を運営していきたい読者の見本となるような企業でなければ取材に値しない。私の取材では、商品製造の技術力を評価するのではなく、企業全体を通して中小企業のあり方を考えさせるのが目的である。赤字会社であっては取材先としては不適当であるため除外される。このような企業は、技術者が興した中小企業に多く見かけられるパターンである。社長が開発技術力を過信し、最高の性能をもつ商品を開発したのだが、市場とマッチングしないので売れ行きが悪いのである。社長は技術の研究と同時に経営の研究もしなければならないのである。
編集部との打ち合わせで、私が見つけてきたニッチ企業の中からさらに絞られて取材先が決められる。私が見つけてきたニッチ企業の内で3社に1社程度の割合で、取材先が最終的に決められた。
最終的に取材先が決められると、編集部から取材先の企業に向けて取材協力の手紙が発信される。丁重に取材の目的、雑誌の性格などを記載した手紙が見本誌と共に送られるのである。これで取材先企業が了解すれば取材開始となり、私がニッチ企業に出向いて社長を取材することになる。
この流れのようにして取材がすんなりと進めば別に問題はないのだが、中には取材を断ってくる企業もある。何社かは取材を断られた。それらのニッチ企業は、『わが社の商品は特に問題もなく売れている。貴誌に取り上げられて宣伝してもらう必要はない』というのが共通した断り文句であった。それはそうであろう、商品が売れなくて困っている訳けでもなく、特定の業界では十分な知名度があって業績は優良なのである。寝た子を起こすようにしてまでして、社会に知られる必要もないのである。取材を断られた数社は、内部留保も高く、トヨタ自動車と同じくらいに超優良企業もあった。
しかし、こんなへそ曲がりなニッチ企業は少数派である。大半の中小企業では大歓迎であった。それまで会社を経営してきたが、雑誌に取り上げられるのは始めてである。しかも、ヨタ雑誌ではなく天下の富士総合研究所が発行するまともな雑誌なのである。社長の経営実績が勲章のように評価されたようなものである。こんな絶好の申し込みを断る中小零細企業主はまずないと考えた方がよいであろう。
長崎県で零細企業を細々と運営してきた七十歳を越える老社長は、私の取材訪問を大歓迎してくれた。老社長の長年の悲願は、自社開発の商品を販売することであった。若い時からの壮大な夢が老年になってやっと実現し、その実績が活字となって評価されるのである。地方で悪戦苦闘してきた成果が発表されるのだから、感激しない訳にはいかないであろう。これは社長業をしてきた者でしか判らない感動であろう。
2005年3月6日
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