2005年02月08日

●隙間商品との出会い

オンボロ会社で製造していたものは
意外と単純な商品だった

 健全経営のオンボロ会社では、万引き防止装置を製造していた。デパートやレコード店などの出入口近くの左右にはゲートのような形をした万引き防止装置が設置されている。出入口に設けられているのは、電磁波を発生する装置である。盗難を防止するためのレコードやCDなどには特殊なタグが取り付けてある。電磁波を発生する万引き防止装置とタグにより盗難を防止するのである。タグを付けた商品を持ち出して出入口を通過すると、電磁波発生装置からの電磁波がタグにより反射され、万引き防止装置のブザーを鳴らして万引き行為を知らせることができる。タグを付けた商品を万引き犯が持ち出すのを出入口で捕らまえることができる。書店、レコード店などではお馴染みの機械であり、時々誤作動して万引き犯がいないのみもかかわらず機械が『ピー、ピー』と甲高い警報を出しているのを見かけることがある。
 この万引き防止装置の構造はそれ程高度なものではない。出入口の付近にある大きな装置は電磁波を発射するだけであり、構造的にはすこぶる簡単なものである。だが、電磁波発生回路の製造には特殊な技術が必要とされる。東芝や日立などの大企業であれば技術力もあるので製造することは訳ないことである。ただ、大企業が生産するのであるから、月間で最低一万台以上を生産しなければ採算が合わない。万引き防止装置の市場は狭く、全国で販売できるのは月間三十台程度であった(私が老社長と出会った頃)。このため、少量生産が得意な中小企業が製造することになるのだが、電磁波発生回路を製造できるような特殊な技術力を持った中小企業は全国でも限られる。技術の特殊性と市場の狭さの相反する課題があるため、万引き防止装置(というより、電磁波発生装置)はそのオンボロ会社が国内での製造を半ば独占していたのだ。
 その当時、万引き防止装置の出荷額は一台三十万円程度であったが、製造原価は三万円位と推測した。毎月三十台の製造であっても、少人数の会社にとっては膨大な利益になる。会社の社屋が薄汚いのは、社会から目立たないようにカモフラージュしていただけのことであった。
 老社長は、『私の会社は、量産が得意な大企業では引き受けない特殊な商品を少量だけ製造し、高い付加価値を付けて売るのが方針なんだ。といって、同業者が簡単に真似できるような商品であっては付加価値が無くなる。他の平凡な中小企業では追いつかないような技術力で、簡単には真似できない商品だけを製造するんだ。』と、中小企業がいかに儲けることができるかのカラクリを解説してくれた。老社長と付き合って判ったのは、高付加価値の商品を生産するならば、中小企業であっても莫大な利益を得ることができる分野があることだった。どうりで、この会社は金払いが良いはずであった。
 大企業が手を染めたがらない隙間商品こそが中小零細会社の目指す目標であり、妙味がある分野といえる。このような流れで、私はニッチ企業に関心を持つことになった。
2005年2月8日

Posted by hibi at 2005年02月08日 23:32
トラックバックURL

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.nichederich.com/cgi/mt-tb.cgi/12

コメント